〈授業に歌を〉My Favorite Things

ルターさん
ルターさん

無冠詞の学習に最適な歌として選曲しました。「理屈抜きに楽しく」あるいは「理屈つきで(?)納得の上で」歌っていただけたらと思います。
英文法のルターさんの鉄板ネタ『犬が好き』事件。
そこから得た最大の発見が【無冠詞】vs.【a/an/some】の使い分けです。

■『犬が好き』事件を検証する

 大学生だった私が、塾で中学1年生を教えていたある日、一緒に働いている恩師と「『犬が好き』と英語で何というか?」で議論になった。
 恩師の主張:I like a dog.と絶対に言わないということはないのだから、I like dogs.とI like a dog.、どちらを言ってもかまわないではないか。
 「I like dogs.だと思うけど…」と、私はこの主張には不満だったが、その時点では「理論武装」できておらず、弁の立つ恩師には勝てず、泣き寝入りした(悲しい!)。この議論が今の私を作ったと言っても過言ではない。そして30歳を過ぎた頃、私を助けてくれたのはレトリック研究で有名な佐藤信夫さんと仲良しの記号学者ロラン・バルトくんとソシュールくんだった。ありがとう、みなさん!

■ソシュールの「統合と連合」で無冠詞を解明!

 ソシュールの「統合と連合」の概念をあらわした「古代建築の柱」のたとえをご紹介します。
 「ひとつひとつの言語単位は、古代建築の柱のようなものだ。柱は建築物の他の部分、たとえば台輪などと実際に隣り合っている関係にある(統合関係)。しかし、もしこの柱がドリア様式のものだとすれば、それはわれわれの頭の中に、他の建築様式、イオニア式やコリント式との比較を呼び起こす。これが潜在的な置換関係(連合関係)である。」
紙数が限られていますからワープしてしまいますが、これが大ヒントになったのです。

ロバート・フリン先生の例文を英文法のルターさんがまとめると…

★名詞の使い方

★名詞の使い方           
参考:ロバート・M・フリン『New Progress in English  Book 1』イエズス会出版(1993)p.100

【名詞】❶《一般論》【無冠詞】❷《具体的な話題》【a/an/some】
① 数えられる名詞I likedogs.I wanta dog.
I likeeggs.I wantan egg.
I wantsome eggs.
② 数えられない名詞I likebread.I wantsome bread.

❶《一般論》「説明」「好き嫌い」は【無冠詞】(名詞の前に何もつけない)を使って対比説明する。
❷《具体的な話題》「物語」「提示」は、【a/an/some】のような冠詞・形容詞・代名詞を名詞の前につけて使う。

■無冠詞は「対比」、説明文向き

(リンゴやナシではなく)「モモが好き」のように
「種類の違い」を対比的に説明する場合【無冠詞】を使います。
・数えられる名詞[数を数える場合]は複数形
  I like ┌ peaches.(リンゴやナシではなく)モモ
     ├ apples. リンゴ
     ├ pears. ナシ
     ├ …  …

・数えられない名詞[量で量る場合]は単数形 ※切り身で食べる大きな果物は単数形
  I like ┌ chicken. 鶏肉
     ├ pork. 豚肉
     ├ beef. 牛肉
     ├ …  …

  I like ┌ melon. メロン
     ├ watermelon. スイカ
     ├ pineapple. パイナップル
     ├ …  …

(適用:Give me water.と無冠詞で言うと「(他のものではなく)水をくれ」と強く聞き手には聞こえます。そこで話し手はGive me some water.として話題のものだけに言及します。「対比を避けるsome」よ、くじけず頑張れ!)

■a / an / someは「対比を避ける」、物語文向き

⒜ ⒈ I’ve just bought a melon.(1個)
⒉ I’ve just bought some melons.(数個)
⒝ I had some melon(ある程度の量)for breakfast.
⒜ 対比を防ぐ【a/an+単数形 some+複数形】
(リンゴやナシではなく)「メロンを買った」と対比したいなら別ですが、ふつうに「メロンを買った」と語りたい場合、並列関係にある他のメンバー[例えば他の果物であるリンゴやナシ]を連想させない言い方として【a/an/some】をつけます。
(蛇足:I like a dog.が単文として不自然なのは、Yesterday I saw a girl named Maria.のように「どんなa dog / a girlか」を物語る語句が抜けていたからなのです。)
⒝量を示す【some+単数形】
「メロンを食べた」と言っても、まるまる一個、 a melonを食べる人は少ないのでは? まるまる1個食べたと言いたいなら別ですが「(切ってある)メロンを食べた」とふつうに言いたい場合、1切れでも2切れでも関係なく「量」を漠然とはかる言い方として簡便に some melonと言います。

参考文献:ロラン・バルト『零度のエクリチュール』所収「記号学の原理」みすず書房 1971
マーク・ピーターセン『日本人の英語』岩波新書 

歌詞の和訳

“雨粒”(バラにくっついている…)と
“ひげ”(子猫にくっついている…)
ピカピカの“銅ヤカン”と
あたたかな“毛糸のミトン”
茶色い“紙パッケージ”
(結んであって…ひもで)
これら[☝]は私のお気に入りの一部

クリーム色した“子馬”と
パリパリの“アップル・シュトルーデル”[渦巻パン]
“ドアベル”
“そりのベル”
“シュニッツェル”[子牛肉のカツレツ](ヌードル添え)
野生の“ガン”
(それは飛ぶ…月を翼に乗せて…)
これら[☝]は私のお気に入りの一部

“女の子”(白い服を着て…)
(サテンのサッシュ[飾り帯]付き)
“雪片”
(それはある/私の鼻とまつげに)
銀白の“冬”
(冬は溶けて…春[泉]になる)
これら[☝]は私のお気に入りの一部

‘犬’が噛んだって
‘ハチ’が刺したって
悲しいときだって
私のお気に入りを思い出すだけ
それで、気分はそんなに悪くないみたい

■「私のお気に入り」の曲の直前と間奏では、マリアが「嫌なことがあったら、素敵なことを考えるの」と言って、子どもたちといっしょに例を挙げていく。
daffodils(水仙)
green meadows(緑の草原)
skies full of stars(星いっぱいの空)
pussy willows(ネコヤナギ)
Christmas(クリスマス)
bunny rabbits(ウサちゃん)
snakes(ヘビ)
chocolate icing(チョコレート糖衣)
no school(休校)
pillow fights(枕投げ)
telegrams(電報)
birthday presents(誕生日プレゼント)
any presents(プレゼントなら何でも)
ladybugs(テントウムシ)
cats(ネコ)
rats(ネズミ)

コメント

タイトルとURLをコピーしました