
現在完了形と現在完了進行形の使い分けは、時制の違いです。
1)現在時制《説明調》
【現在完了形】は「すでに~している」と説明するのに使う。
2)過去時制《物語調》
【過去形】は「あるとき~した」と物語るのに使う。
【過去完了形】は過去形で誤解がないなら「回数・期間の副詞表現」があっても使わない。
Q: なぜ「時制の違い」を「現在完了形と過去形の使い分け」の解説に持ち出すのか?A: 「現在完了形と過去形の使い分け」は「副詞表現の違い」だけでは説明できないから。
以下の対話にあるように「過去形+回数(three times)、期間(for/since)」がOK ですので、「現在完了形・過去完了形+回数(three times)、期間(for/since)、過去形はagoなどの過去の時点をあらわす副詞表現と用いる」という、多くの方が信じている「副詞表現の違い」による文法解説だけでは不完全なのです。

「現在完了形と過去形の使い分け」がわからない生徒が多いですね。
私は以下のように「副詞表現の違い」で説明しています。
1)「現在完了形は 回数(three times)、期間(for/since)のような副詞表現と用いる」
【現在完了形】+for two days (2日間)
【現在完了形】+since 1990(1990年以来)
2)「過去形は~ago/yesterday/when+SVのような過去の時点をあらわす副詞表現と用いる」
【過去形】+two days ago(2日前に)
【過去形】+in 1990(1990年に)
When+S+【過去形】, S+【過去形】.(SがVしたときに)
(=【現在完了形】は、過去の時点をあらわす副詞表現と一緒に使わない)

中村先生のような解説をしている方が多いかと思います。
方便としては良いですが、見た目(観察した結果)を説明しているに過ぎません。
では、「過去形+回数(three times)、期間(for/since)」がOKだということをどう説明しますか?
回数や期間があっても、現在完了形や過去完了形を使わなくていいんですよ。
過去の大学入試問題で出ています。

たしかに…。不十分な説明なんですね。
大学入試問題で出された「過去形+回数(three times)、期間(for/since)」の例
【過去形】《動作》+回数 | 過去形 | +回数 | |
東京にいたとき、3回、観た センター追96 “Have you ever seen that movie?” “Yes. When I was in Tokyo, I ( ) it three times. ” ① had seen ② have seen ③ saw ④ would see | I saw 見た | three times 3回 | |
1980年代に4回、訪れた 慶應大(理)03 We ( ) Italy four times during the 1980s. ① used to visit ② would visit ③ visited ④ have visited | We visited Italy イタリアを訪れた | four times 4回 | |
【過去形】《状態》+期間 | 過去形 | +期間 | |
3年間住んでいた センター98 I ( ) in China for three years when I was a child, but I can’t speak Chinese at all. ① have been ② have once stayed ③ lived ④ went | I lived 住んでいた | for three years 3年間 | |
子どもの時に住んでいた 学習院大(経)99 When I was a child, we ( ) in Singapore. ① had lived ② lived ③ have lived ④ would live | I lived 住んでいた | when I was a child 子どもだった時 | |
【過去形】《動作》+回数 | ③ 「あの映画、観たことありますか?」「はい。東京にいた時に3回観た」 ③ 私たちは1980年代にイタリアに4回訪れた。 | ||
【過去形】《状態》+期間 | ③ 子どもの時に中国に3年間住んでいたが、中国語はまったく話せない。 ② 子どもの時にシンガポールに住んでいた。 |
Q: では、「現在完了形と過去形の使い分け」を「時制の違い」で説明すると、どうなるのですか?A: 1)現在時制《説明調》で【現在完了形】を使う。 2)過去時制《物語調》で【過去形】を使う。

では、解説します。時制は2つです。
現在時制《説明調》 vs. 過去時制《物語調》です。
1)現在時制《説明調》
「過去[から今までのこと]を説明する」ときには
【現在完了形】と【現在完了進行形】を使います。
2)過去時制《物語調》
「いつどこでだれがどうしたか」のような
「過去を物語る」ときには、主に【過去形】を使います。
「過去形+回数(three times)、期間(for/since)」はOK
(それと同時に、過去完了形にする必要はない)。
もちろん、「過去形+過去の時点をあらわす副詞表現(~ ago, in 1980など)」もOKです。
●過去時制《物語調》で【過去完了形】を使うのは、話の流れで前後関係をはっきりさせたいときであり、回数や期間がをあらわす副詞表現があるからといって、必ずしも使うわけではない。
●「現在時制をそのまま過去時制に移項(シフト)する」というのは間違った認識です。
現在時制《説明調》では【現在形】【現在進行形】【現在完了形】が3本柱。【助動詞】も多用する。
過去時制《物語調》では【過去形】を多用する。【過去完了形】【過去完了進行形】【助動詞】の出番は少ない。
ということで、現在時制《説明調》と過去時制《物語調》は、相似形ではないのです。
1)現在時制《説明調》対話向き=話し手が聞き手に説明する


現在時制での未来表現、仮定法過去、仮定法過去完了は別の記事で扱います。
未来完了形 | will have+過去分詞 | ⑧《未来の経験》(そのとき)~したことになるだろう ⑨《未来の完了》(そのときすでに)~しているだろう ⑩《未来の状態の継続》(そのときずっと)~しているだろう |
未来完了進行形 | will have been ~ing | ⑪《未来の動作の継続》(そのときずっと)~しているだろう |
仮定法過去 | 過去形、be動詞はwere | 《現在を想定》(今)~だったら |
仮定法過去完了 | had+過去分詞 | ⑫《過去を想定》(今)~していたら |
2)過去時制《物語調》報告向き=書き手が物語る

過去形 | ①《出来事》「~した」 ②《状態》「~していた」 ※過去の習慣的動作はwould often doであらわすことが可能。 | |
過去完了形 | had+過去分詞 | ①《完了》(そのときすでに)~していた ②《状態の継続》(その時までずっと)~していた |
過去完了進行形 | had been ~ing | ③《動作の継続》(その時までずっと)~していた |
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