
ルターは五文型を英語学習で活用することを推奨しています。
SVOCの汎用性・便利さに学習者に気づいてもらえるように伝えるのがルター式英文法の責務だと思っています。「今朝見つけた例文」と過去の雑誌『新英語教育』掲載記事「SVO to ~の定番.」の2つを合わせて再構成しました。英文法の観点で重要なことを話していますので、英語教員の方にぜひ読んでいただきたいです。
1)例文 She sang the baby to sleep.

今朝(2023/02/20)、ロングマンの辞書のsingの項目でこんな例文を見つけました。
She patiently sang the baby to sleep.
https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/sing DeepL翻訳[パラフレイズ後]
彼女は辛抱強く歌を歌って赤ん坊を寝かしつけた。
【不定詞の副詞用法】to sleep「眠るために」は誤訳です

大学受験生の大樹です。
ルターさん、to sleepのところは不定詞の副詞用法で「眠るために」と言う意味で
「彼女は眠るために赤ん坊に辛抱強く歌った」という和訳ではダメなんですか?

大樹くんは、SVOCではなく、SVOだと思ったんですね。誤訳です。
この英文がSVOCであるとわかることが英語がわかっているということです。
こういうことをルター式英文法は英語の学習で伝えていきたい。
では、大樹くん、以下の表の英文を上から順番に見てください。
S | V | O | C | 和訳 | |
---|---|---|---|---|---|
使役動詞 | She | made | the baby | sleep. | 彼女は赤ん坊を寝かせた。 |
使役動詞の言い換え | She | forced | the baby | to sleep. | 彼女は赤ん坊を無理やり寝かしつけた。 |
She | sang | the baby | to sleep. | 彼女は歌を歌って赤ん坊を寝かしつけた。 |

なるほど、
made「~させた」、
forced「無理やり~させた」
sang「歌って~させた」という流れで
SVOCなんですね。
ルターさんの言いたいこと、わかりました。
和訳するときに気をつけます。
2)「SVO in order to do」にすると SVOCではないと暗示できる!

先ほどの1とこれから説明する2は、2022年度からスタートした高校の「論理と表現」の教科書に載せてほしいと心底思います!

ルターさん、落ち着いて。少々興奮気味ですが、どういう内容ですか?
英語の大原則! 「動詞(不定詞)のすぐ前の人がその動作をする」

名著 A Practical English Grammar の引用をご覧下さい。
英語では「動詞(不定詞)のすぐ前の人がその動作をするのが原則」です。
この原則が大事なんです!
以下の引用例で、
英語話者は、
❶ He to learn 彼が学ぶ…
❷ Tom to buy トムが買う…
❹ his sons to learn 彼の息子達が学ぶ…
という流れで理解します。
「SVO in order to do」にすると SVOCではないと暗示できる
目的は不定詞で表す。
❶ He went to France to learn France. 彼はフランス語を学ぶためにフランスに行った。述語動詞の目的格が人の場合にその人が動作をする(主語の人ではなく)
❷ He sent Tom to the shop to buy bread. (トムがパンを買うことになる)
彼はトムにパンを買いに行かせた。「~するために」
① in order to do
主語の人が動作したい、あるいは、主語の人がその出来事が起きてほしいと思っていると暗示② so as to do 主語の人がその出来事が起きてほしいと思っていると暗示
Thomson A. J . and Martinet, A. V. (1986) A Practical English Grammar, Oxford, 4th ed. p. 294 要旨を英文法のルターさんがまとめた
→従って、in order toの方をよく使う

【2023/02/20時点の翻訳比べでは「トムが買う…」が反映されているDeepL翻訳の勝ち!
DeepL翻訳(SVOCとして翻訳。優秀!):彼はトムにパンを買いに行かせた。
グーグル翻訳(不定詞の副詞用法として翻訳。英語の構文がわかっていない):彼はパンを買うためにトムを店に行かせた。】
in order toは「不定詞の動作をするのは目的語の人ではなく主語の人」と暗示
「SVO in order to do」にすると SVOCではないと暗示できる
❸ He sent his sons to a boarding school in order to have some peace.
父親である彼が心安らかになるため❹ He sent his sons to a boarding school to learn to live in a community.
息子達が共同体で暮らすことを学ぶためHe sent his sons to a boarding school because he wanted to have some peace.
Thomson A. J . and Martinet, A. V. (1986) A Practical English Grammar, Oxford, 4th ed. pp. 294-295 要旨を英文法のルターさんがまとめた
この場合は、in order to doではなく、
because+SVを用いて「なぜなら彼が心安らかになりたかったので」と表現すると文意が明確になるので、一般的。

❸ He sent his sons in order to have some peace
父親である彼が心安らかになるため
英語話者は、in order to があることで、
不定詞の直前のhis sonsが haveするのではなく、
主語のHeがhave some peaceと理解します。
まとめると、
目的語(O)の人物と不定詞の間にin order toを使って物理的に距離を置き
「不定詞の動作をするのは目的語の人ではなく主語の人だよ」と暗示する表現・手法なのです。

なんとなく、わかったような気がします。

ルター自身、英語学習者として「in order toの、in orderってどういう意味なのかな? なぜ使うのかな?」とずっと疑問でしたが、このA Practical English Grammer の「in order toは物理的に距離を置くために使う」「主語の人が動作したい」という説明のおかげで、in order toを使う意義がわかった気がしました。こういう文法解説をルター式英文法は目指してます。
では本題の雑誌記事をお読みください。
3)「SVO to ~の定番.」 雑誌『新英語教育』(2015.5)掲載記事
私には7歳上で数学が得意な兄がいる。私が20代の頃、兄がデューイ『学校と社会』を英文で読んでいて意味がとれないと見せてくれた文がtrain+O+to doだった。兄は不定詞の副詞用法「~するために」だと思っていたが、私はSVOCの第五文型だと見抜き、「腕力や数学では勝てないが英語では兄を乗り越えた!」と思えた瞬間が今も忘れられない。
trainと意味が近いteachはtell、ask同様、to doだけでなくhow to ~も接続出来る点で名詞用法に近いのでSVOOとしたい人が多いだろう。
My father | taught | me | to swim. | 父は私に泳ぎを教えてくれました。 |
how to swim. | 父は私に泳ぎ方を教えてくれました。 |
私は「分類はせずとも、シフト(移項・書き換え)は示すべきだ」と考える。具体例は後半に挙げる。
1)【SVOC】SVO+to ~(不定詞)
①人が「頼んだり命令したり期待したり要請したり許可したりしてOに~してもらおう!」という動詞
伝達・依頼 | tell, yell at, ask, advise, beg |
希望・好悪 | hope, want, ’d like |
期待・予期 | expect, long for, wait for |
勧誘・促進 | invite, urge, push |
説得 | persuade, prevail on, |
命令・警告 | order, request, warn |
奨励・刺激 | encourage, inspire |
許可 | allow, permit |
要請 | call on, depend on, rely on |
I’d hate you to think we were late on purpose. 私たちがわざと遅れたと思われるのは嫌だなぁ。
The teacher always picks on me to answer difficult questions. 私を選んで難問を答えさせる
I paid him $5 to cut the grass. 5ドル払ってさせた
②無生物主語
His refusal to answer provoked me to shout at him. 彼が答えないので私は怒鳴った。
Poverty and hunger drove them to steal. 貧困と飢餓が彼らを盗みに走らせた。
2)【SVOC】V(知覚動詞)+O+C(原形不定詞→現在分詞→過去分詞)
①V+O+原形不定詞:Oが~するのが聞こえた
②V+O+現在分詞:Oが~しているのが聞こえた
③V+O+過去分詞:Oが~されるのが聞こえた
S | V | O | C | |
---|---|---|---|---|
I | heard | her | call my name. | 私は、彼女が私の名前を呼ぶのを聞いた。 |
I | heard | her | calling my name. | 私は、彼女が私の名前を呼んでいるのを聞いた。 |
I | heard | my name | called. | 私は、私の名前が呼ばれるのを聞いた。 |
3)【SVOC】V(使役動詞)+O+C(原形不定詞→過去分詞) V(使役動詞の言い換え)+O+C(不定詞→過去分詞)
①V+人+原形不定詞:人に~させる
②V+人+to不定詞:人に~させる
S | V | O | C | OがCする… |
---|---|---|---|---|
She | made | me | clean the room. | 彼女は私に部屋を掃除させた。 |
She | forced | me | to clean the room. | 彼女は私に部屋を掃除するように強いた。 |
I | had | him | repair my bike. | 私は彼に私の自転車を修理してもらった。 |
I | got | him | to repair my bike. | 私は彼に私の自転車を修理してもらった。 |
They | let | her | study abroad. | 彼らは彼女を留学させた。 |
They | allowed | her | to study abroad. | 彼らは彼女が留学するのを許した。 |
③V+人+原形不定詞:人に~してもらう
④V+物+過去分詞:物を~してもらう
S | V | O | C | |
---|---|---|---|---|
I | had | him | repair my bike. | 私は彼に私の自転車を直してもらった。 |
I | had | my bike | repaired. | 私は私の自転車を直してもらった。 |
3)【SVOC】V(want, haveの否定文で)+O+~ing(現在分詞)

この用法は学校英語では扱われていない。
SVOC | 意味 |
---|---|
don’t want+O+~ing | Oに~させておかないぞ |
I won’t have+O+~ing | Oに~させておかないぞ |
4)【SVOC】不定詞→動名詞の書き換え 「話して~させる」V+O+to ~ → into ~ing 「話して~させない」V+O+not to ~→ out of ~ing

ルターが注目している用法です。
persuade「説得して~させる」は不定詞・動名詞両方使える。
talk「話して~させる」は動名詞のみ。
この用法は学校英語では扱われていないのに、大学入試では出題されている。
「話して~させる」V+O+to ~ → into ~ing
「話して~させない」V+O+not to ~→ out of ~ing
S | V O | C | |
---|---|---|---|
He | told me | to buy the car | 彼は私にその車を買うように言った。 |
He | persuaded me | not to buy the car | 彼は説得して私にその車を買わせなかった。 |
He | talked me | into buying the car | 彼は話して私にその車を買わせた。 |
He | persuaded me | out of buying the car | 彼は説得して私にその車を買わせなかった。 |
talkedとpersuadedは完遂性を出して「話して/説得して~させた」と訳す。
(池上嘉彦『〈英文法〉を考える』(ちくま学芸文庫)参照。)
未完の場合には
I tried to persuade ~.のように表現する。
受動態で:買わないように説得された
センター2010 答えは③
I was talked ( ) buying a big car by my sister.
① about ② away from ③ out of ④ to
前置詞fromの例:My father is a lawyer, and he discouraged me from entering the field.
(DeepL翻訳に加筆:私の父は弁護士ですが、私がその分野に入ることを思いとどまらせました。)
受動態にした例文もご活用ください。
S | 受動態「説得された」 | ~するように、~しないように | |
---|---|---|---|
I | was told | to buy the car. | 私はその車を買わないように言われた。 |
I | was persuaded | not to buy the car. | 私は説得されてその車を買わなかった。 |
I | was talked | into buying the car. | 私は言われてその車を買わなかった。 |
I | was persuaded | out of buying the car. | 私は説得されてその車を買わなかった。 |
4)「SVO to ~の定番.」 pdf

3の内容をコンパクトに読めますので、雑誌記事のpdfを載せました。
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