原点は、母の手作りカルタ
私の幼少期、子育てが落ち着いた母は、近所の小学生を集めて英語を教え始めました。絵本を2冊使って自作した英語カルタを母が読み上げ、子どもたちが札を取る。ただそれだけの遊びです。

この絵本の魅力は、今見ても色褪せません。イラストを手がけたティボル・ゲルゲイさんの動物たちは、どれも表情が豊かです。檻の中のライオンでさえ、”I saw a lion at the zoo.” という文とともに、こちらに語りかけてくるような目をしています。



fairy には “The fairy has a magic wand.”、
unicorn には “The unicorn has one horn.”、
juggler には “The juggler juggles balls and hoops.”
― 絵と例文が結びつき、単語の意味がわからなくても情景が伝わる作りになっていました。
その中で、ある男の子がいつも同じ札を狙っていました。「ヘリコプター」です。

絵の魅力だけなら、fairy や unicorn の方が子どもの心をつかみそうなものです。それでもその子が惹かれていたのは、helicopter という語の音そのものでした。
helicopter[hélikàptər]― 日本語の「ヘリコプター」とは違う、英語らしい響き。その面白さに、彼は毎回吸い寄せられていたのだと思います。
これが、私にとっての語彙指導の原点です。単語は意味だけでなく、音そのものが学習者を引きつける力を持っている。この気づきが、後の「ルター式」の語彙指導法につながっていきました。
「3語で1組にして声に出す」とは
単語を1語ずつ独立して覚えるのではなく、音節数・強勢の位置・母音の型が同じ単語を3語まとめてグループ化し、声に出して覚える——これがルター式語彙指導法の基本発想です。
なぜ3語なのか。1語では偶然かもしれませんが、3語揃うと「型」として認識できます。型として認識できれば、4語目・5語目に出会ったときも自分で当てはめることができる。つまり、単語を「覚える」から「見分けられるようになる」への転換です。
実例① 音節数と強勢が同じ乗り物

helicopterの原点を、そのまま教材化した例です。
- a helicopter [hélikàptər]
- an elevator [éləvèitər]
- an escalator [éskəlèitər]
いずれも4音節で、第1音節にアクセントがあります。「ヘリコプター」も「エレベーター」も「エスカレーター」も、日本語ではカタカナ語として馴染みがありますが、アクセントの位置も、音の響きも、英語とはまったく別物です。3語まとめて声に出すことで、そのズレに気づきやすくなります。
実例② 接尾辞と強勢の型

接尾辞によって強勢の位置が変わる語も、同じ発想でグループ化できます。
第1アクセント(●-age) image / damage / manage
第2アクセント(-oo) tatoo / shampoo / bamboo
第3アクセント(-eer) engineer / pioneer / volunteer
強勢の位置が語尾に近づくほど、アクセントの点が右に移動していく ― この視覚化も、3語1組にすることで初めて成立します。1語だけでは規則性は見えません。
実例③ 母音[aʊər]の型——tower, towel, flower, shower, flour, hour
ある小学校英語教科書に、こんな例文がありました。
Let’s go to France.
You can see the Eiffel Tower.
It’s beautiful.
New Horizon Elementary 6年(東京書籍)41ページ Let’s Read and Write:
the Eiffel Towerという固有名詞を覚えさせる例文でしたが、実際にパリを訪れれば、現地でよく耳にするのはフランス語の La tour Eiffel の方でしょう。英語の授業でこの語を発音練習する場面は、思いのほか限られています。

それよりも、tower という語そのものの音[táuər]を身につける方が、はるかに汎用性があります。なぜなら、この音は他の日常語にも共通しているからです。
| a tower | [ə táuər] | 塔 |
| a flower | [ə fláuər] | 花 |
| some flour | [səm fláuər] | 小麦粉 |
| a towel | [ə táuəl] | タオル |
| a shower | [ə ʃáuər] | シャワー |
| an hour | [ən áuər] | 1時間 |
「タワー」「タオル」「フラワー」「シャワー」 ― 日本語ではカタカナでバラバラに発音されますが、英語では同じ[aʊər]系の音を共有しています。しかも flower と flour は綴りこそ違え、発音は完全に同じ同音異義語です。an hour の h が発音されないことも、あわせて気づける材料になります。

さらに、単語をフレーズへと展開すると、実際の使用場面に近づきます。
| a tower | [ə táuər] | 塔 |
| the Eiffel tower | [ði àifəl táuər] | エッフェル塔 |
| a flower | [ə fláuər] | 花 |
| water the flowers | [wɔ́tər ðə fláuərz] | 花に水をやる |
| some flour | [səm fláuər] | 小麦粉 |
| mix the flour | [míks ðə fláuər] | 小麦粉を混ぜる |
| a towel | [ə táuəl] | タオル |
| dry a towel | [drài ə táuəl] | タオルを乾かす |
| a shower | [ə ʃáuər] | シャワー |
| take a shower | [tèikə ʃáuər] | シャワーを浴びる |
| an hour | [ən áuər] | 1時間 |
| It takes an hour to do | [it tèiks ən áuər] | ~するのに1時間かかる |
- It takes an hour(to doと連結).
例) It takes an hour to get to the station. 駅まで1時間かかる。
固有名詞ひとつを覚えるより、日常のさまざまな場面で使い回せる音の型を身につける方が、学習の効率としてはるかに高い。これが、私がこの教材を通して伝えたいことです。
なぜこの方法が有効なのか
語彙・例文を選ぶとき、私は次の基準を大切にしています。
- 平易であること
- 使用頻度が高いこと(話す・聞く・読むいずれの場面でも)
- 構造が伝わりやすく、応用が利くこと
- 似た表現との「使い分け」「グループ化」:派生語
- 他言語と比較することで、英語特有の性質が際立つこと
- その文化圏での実態と乖離していないこと
「3語で1組にして声に出す」という方法は、この6つの基準すべてに応えられる指導法だと考えています。一語一語をばらばらに暗記するのではなく、音の型として捉え直す。すると、学習者は新しい単語に出会ったときも、自分の力でその音を予測できるようになります。
母のカルタで helicopter に食いついた男の子は、意味や絵柄ではなく、音そのものの面白さに反応していました。あの日の発見は、今も私の教材作りの根っこにあります。
★参考 ルター式「名詞の使い方」
名詞の使い方 ❶【無冠詞】❷【a/an/some】


名詞の使い方 ❸【the】 ❹【this/that/these/those】

a/anとsomeの使い分け





some+単数形 を使いこなす

❷【a/an/some】《具体的に物語る》(対比しない)の用法で、
数えられない名詞(粉類・飲み物など)で用いる、
some+単数形を使いこなしましょう!





some+複数形 を使いこなす

❷【a/an/some】《具体的に物語る》(対比しない)の用法で、
数えられる名詞で用いる、some+複数形を使いこなしましょう!
特にペアで数える名詞(メガネ、靴、パンツなど)に注目!





ルター式英文法のサイトでは、名詞のクイズをたくさん作っていますので、ご活用下さい。


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