New Horizon Elementary 5(p.28)posterとnoticeの混同について ― ネイティブ協力の必要性

1)posterとnotice の違い ― 日本語の「ポスター」が英語のposter と一致しない例

小学校英語の授業で “Look at this poster.” と聞くと、子どもたちは素直に「ポスターだ」と思います。
しかし、その絵に描かれているのは “Don’t run.” と注意を促す掲示物
日本語では、色がキレイで大きな「ポスター」も注意書きやお知らせなどの「掲示物」も同じように「ポスター」と呼ばれがちですが、英語では “poster” と “notice(または sign)” は用途がはっきり異なります

poster
広告・啓発・装飾目的
(→色やデザインで目を引く)

notice / sign
情報・警告・注意目的
(→読むべき内容を伝える)

たとえば学校の廊下に「走らないでください」と書いてある紙が貼ってあるなら、
それは “poster” ではなく “notice” です。
英語の世界では、この区別を大人も子どもも自然に感じ取っています。

ところが、日本語の「ポスター」という言葉が広く使われているため、
“poster” と “notice” の違いが見落とされることがあります。
文化の背景の違いを反映している、言葉のズレを「False Friends(空似言葉)」と呼びます。最後の(4)でまとめています。

ルターさん
ルターさん

今回の “poster” の例は、教材制作の現場において
ネイティブスピーカーの協力やチェック体制の重要性
を改めて考える良いきっかけになるでしょう。

2)東京書籍へのメール 2025/10/20

東京書籍 英語教科書編集部 御中

いつも質の高い英語教材のご提供をありがとうございます。
『New Horizon Elementary 5』p.28 Listen and Talk No.4 に関して、気づいた点があり、ご報告いたします。

該当箇所では音声が “Look at this poster.” となっていますが、
教科書の挿絵は「ろう下は走らない(Don’t run.)」という文字とピクトグラムで構成されています。
このような掲示物は、英語では一般的に notice または sign と呼ばれるもので、
poster は主に広告や装飾を目的とした掲示物を指すとされています。

【参考:Longman Dictionary of Contemporary English】

poster: a large printed notice, picture, or photograph, used to advertise something or as a decoration

notice: a written or printed statement that gives information or a warning to people

この文脈では “Look at this notice.” の方が自然な英語表現になるのではないかと思われます。

私自身、出版社勤務時代に、英語問題集で「ベンツ」と記載されていた箇所を
組版担当の方(英会話を学ばれていた方)が “Mercedes” ではないかと指摘してくださった経験があります。
立場にかかわらず、言語の違和感を気軽に共有できる場があることの大切さを、そのとき実感しました。

音声収録の際に、ネイティブスピーカーの方々が「この表現は自然かどうか」を気軽に伝えられるような環境づくりが進むと、さらに良い教材が生まれるのではないかと感じます。

小さな気づきではありますが、今後の改善や制作時のご参考になれば幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

ルターさん
ルターさん

英語の音声を録音をする際にネイティブスピーカーがおかしいと思うことを率直に言ってくれたら、こうはならなかったと思います。
教科書会社の編集者の皆さんには、音声録音をする際にネイティブスピーカーにおかしところはないか、声がけしてほしいです。

3)東京書籍からのお返事 2025/10/21

ルターさん
ルターさん

お返事来ました。

(回答)【東京書籍】お問い合わせの件でご連絡です [受付番号:[#79604#]]
この度は貴重なご意見をお寄せいただき、誠にありがとうございます。
辞書の語義まで添えて丁寧にご説明くださいましたこと、重ねて御礼申し上げます。
お寄せいただきましたご意見は、今後の教科書・教材開発における参考資料として、ありがたく拝受いたします。
ご指摘のとおり、言葉の持つ意味や実際の用法を理解し、より自然で適切な表現を追求することは、教材開発において重要なことのひとつであると改めて認識いたしました。
今後とも、お気づきの点がございましたらご指導いただけますと幸いです。
この度は誠にありがとうございました。

4)False Friends(空似言葉)

日英語対応する英語と意味英語の実際の意味注意点・例
マンションapartment:アパートや中規模の集合住宅 condominium (condo):コンドミニアムmansion:豪華な大邸宅英語のmansionはお城のような大きな家を指します。日本の集合住宅を「mansion」と言うと驚かれます。
例「マンションに住んでいます」
(○)I live in an apartment.
(×)I live in a mansion.(豪邸に住んでいる)
バイキングbuffet:ビュッフェスタイルの食事※(定額制の食べ放題ではなく)従量制 smorgasbord:バイキング料理 ※使用頻度低い語。Viking:北欧の古代海賊バイキング(定額制の食べ放題)は日本独自の形式。 BBQ(バーベキュー)同様にbuffetは食事のスタイルの言い方ですので、go to a buffet, eat a buffet lunchのように使います。(=eat a buffetは不自然です)
例「昨日家族でバイキングに行きました」
Yesterday, I went to a buffet with my family.
例「昨日バイキングを食べました」
Yesterday, I ate a buffet lunch with my family.
スマートslim stylish chic スリムで洗練された(体型や服装)smart:賢い、頭の良い英語のsmartは知性や賢さを強調。
アバウトvague rough approximate 大雑把で曖昧なabout:約、関して英語の「about」は「〜について」の意味が強い。
ミシンsewing machine 家庭用ミシン(縫い機)machine:機械全般「sewing machine」が正しい。
テンション  excitement:興奮 energy:エネルギー mood:気分 気分や興奮の高まり(ポジティブ)tension:緊張、張力(ネガティブ)英語ではストレスを意味。
カンニングcheating:ズル、カンニング cheat sheet:カンニングペーパーcunning:ずる賢い、狡猾な英語では性格の悪さを指す。
サービスfreebie:無料のもの、招待券、景品 bonus:おまけ、景品 perk:割引service:奉仕、サービス(提供するもの)英語では「給仕」や「修理」を意味。
サイダーlemon soda:レモン風味の炭酸飲料(ソーダ) fizzy drink:炭酸飲料(ソーダ)cider:リンゴを発酵させたアルコール飲料(アップルサイダー)日本独自の解釈で、英語圏ではお酒のイメージが強い。
コンセントpower outlet 電源の差し込み口(プラグ) socket:ソケットconsent:同意、許可英語の「consent」は法的な同意を意味する。
サラリーマンoffice worker white-collar worker businessperson 会社員(主に男性のホワイトカラー)salaryman:給与をもらう人(gender-neutral)
トランプplaying cards card game トランプカード(遊戯王みたいなカードゲーム)trump:切り札、または大統領の姓(Donald Trump)英語ではアメリカ大統領の姓(Donald Trump)を連想することが多い。
ワンピースdress one-piece dress ワンピースドレス(女性のつなぎ服)one-piece:ワンピース水着(swimsuit)英語では水着のイメージが強い。
パーカーhoodie sweatshirt フード付きのジャンパー(パーカー)Parker:人名(例: Parker Brothers)または特定のブランド英語ではブランド名や姓が先に来る。
プリントhandout worksheet 学校の配布資料(ワークシート)print:印刷物、印字、写真のプリント資料は「handout」や「worksheet」が正しく、printは印刷プロセスを指すfalse friend。
パンフレットpamphlet (政治・教育) brochure (広告・カタログ) 薄い情報冊子pamphlet:政治的な薄い本 brochure:広告的な薄い本混同しやすいが、文脈で使い分け。旅行広告はbrochureが適切。
シャーペンmechanical pencil 機械式鉛筆(芯を差し替えるもの)sharpen:研ぐ、鋭くする(動詞)「sharpen」は鉛筆を削る動作を指す。
ノートnotebook notepad ノートブック(手帳やメモ帳)note:短いメモや音符英語の「note」は一枚のメモ。
日本語の「ノート」は英語で「notebook」。
ペーパーtoilet paper:トイレットペーパー exam paper:テスト用紙paper:一般的な紙(新聞紙など)文脈でトイレットペーパーは「toilet paper」が明確。
ホッチキスstapler:ステープラーHotchkiss:発明者の姓(Hotchkiss社)英語では人名や古い銃のブランドを連想。
セロハンテープScotch tape:セロテープ clear adhesive tape:透明粘着テープcellophane tape:セルロファン素材のテープ(包装用)英語では素材を強調するが、日本語は一般的なテープの代名詞。
マジックテープVelcro:マジックテープ(ベルクロ) Hook-and-loop fastener:面ファスナーmagic tape:魔法のようなテープ(存在しない)英語では「魔法のテープ」の意味。
シールsticker:ステッカー label:ラベルseal:⒈封印、署名、⒉アザラシ(動物)英語の「seal」は公式の印やアザラシを指すことが多い。
サインペンmarker:マーカー felt-tip pen:フェルトペンsign pen:署名用のペン英語では署名専用を連想し、マーカーとは違う。
サインsignature(署名) autograph(著名人のサイン)sign:標識、星座、兆候、信号英語で「sign」というと「看板」「兆候」「星座(zodiac sign)」。
ボールペンballpoint penボールペン(インクのボール式ペン)ballpenは、使われない英語では「ballpoint pen」が標準で、「ballpen」は一部地域限定。
ボンド紙bond paper:上質紙(印刷用紙)※文脈でOK plain paperbond paper:債券(financial bond)英語の「bond」はお金の債券を連想。
段ボール箱、ダンボールcardboard box:波状の厚紙でできた箱(梱包用)
cardboard:厚手の紙板素材(箱とは限らない)
語源は「dumb board」(無表情の板)から来ている和製英語
ガムテープpacking tape:梱包用の粘着テープ(ガムテープ)
duct tape:粘着テープ(一般/修理用)
gum tape:ゴムのテープまたは噛むガムのテープ(存在しない)英語の「gum」はガム(嚙む菓子)、またはゴム。

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