
このクイズの解説❶~❹で皆さんに納得いただき、英語の時制はいくつあるか問題に終止符が打てるよう、本日(2025/03/04)書き換えました。
英語の時制はいくつ?

Q: 英語の時制はいくつ?
2(現在時制・過去時制)
3(現在・過去・未来)
12(現在形・現在進行形・現在完了形・過去形など)
答え


英語の時制は2つ(現在時制・過去時制)です。
解説❶~❹


納得のいく解説をお選びいただき、
英語の「時制は2つ」だと確信してください。
解説❶ 学習指導要領に「現在時制と過去時制」と書いてある
「時制」とは,動詞を変化させることで時間について表すことであり,
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編 平成 30 年 7 月 p.39
現在時制と過去時制があり,未来の事柄は助動詞等を用いて表す。
相には,進行相と完了相があり,
この組合せのうち,中学校で指導するものは,
・現在形,過去形
・現在進行形,過去進行形
・現在完了形
・現在完了進行形
・助動詞などを用いた未来表現
である。高等学校では,過去完了形,過去完了進行形を加えて指導する。
https://www.mext.go.jp/content/1407073_09_1_2.pdf


文科省は時制を2つとしています(詳細は上記の緑の部分を参照)。
文科省の定義(引用: 高等学校学習指導要領 p.39)
- 時制は2つ: 現在時制と過去時制
- 助動詞などを用いた未来表現
解説❷「時制は3つ」「時制は12ある」という考えの問題点

●「時制は3つ」という考えの問題点:未来時制はない
1) 現在
2) 過去
3) 未来 ← ×
(〇)未来表現(will、be going to、現在進行形など)
(×)未来時制
(×)完了時制
●「時制は12(またはそれ以上の数)ある」という考えの問題点:
以下に12あるのは「述語動詞の形」。時制(tense)ではない。
現在形、現在進行形、現在完了形、現在完了進行形
過去形、過去進行形、過去完了形、過去完了進行形
will+動詞の原形、未来進行形、未来完了形、未来完了進行形
解説❸「時制は2つ」なのは、 音楽の「調が2つ」なのと同じ
音楽の調(code)は、曲の調子のこと。
1. 明るい調子の長調
2. 暗い調子の短調
時制(tense)は、文章の調子のこと。
1. 現在時制は明るい調子の《説明調》
2. 過去時制は暗い調子の《物語調》


文科省学習指導要領にある「時制とは、動詞を変化させることで時間について表すこと」は、ルター式英文法の考え「時制とは、文章の調子のこと」とは異なります。
「時制は音楽の調と同じ」という類推によって、わかりやすい視点を提案しています。
解説❹リクールの考察を英語の時制に適用する

バンヴェニスト( Émile Benveniste 1902 -1976 )
フランスの言語学者。著書『一般言語学の諸問題』。
ヴァインリヒ (Harald Weinrich 1927-2022 )
ドイツの言語学者。著書『時制論』『言語とテクスト』。
リクール(Paul Ricoeur 1913-2005)
フランスの哲学者。著書『時間と物語』で、
ヴァインリヒの「〈緊張〉と〈緊張緩和〉」と
バンヴェニストの「〈言述〉と〈歴史〉」を考察。

リクール『時間と物語Ⅱ』新曜社(1988) pp.112-119を要約。
フランス語の時制も2つです。
◆リクールの考察
① 談話(discours)
・論評する = 緊張
・話し手と聞き手を想定する。しかも、話し手は聞き手に影響を与えようとする。
・現在(le présent)、未来(le futur)、複合過去(le parfait)
② 物語(réci)
・物語る = 緊張緩和
・話し手は介入しない。「出来事はひとりでに物語られるかのようである。」
・単純過去(le passé simple défini)、半過去(l’imparfait)、
大過去(le plus-que-parfait)、条件法(le conditionnel)


リクールは時制を『緊張』と『緊張緩和』で説明しています(詳細は上記の緑の部分を参照)。
以下がルター式英文法の考察です。

① 【現在時制】《説明調》会話体向き
「~いる」「~する」と説明・評価する = 緊張
話し手と聞き手を想定。話し手は聞き手に影響を与えようとする。
述語動詞の3本柱は、【現在形】 【現在進行形】【現在完了形】
② 英語の【過去時制】《物語調》物語・報告文向き
「いつ誰がどうしたか」を物語る = 緊張緩和
話し手は介入しない。「出来事はひとりでに物語られるかのようである」
述語動詞は【過去形】が大黒柱。
【過去進行形】【過去完了形】【助動詞の過去形】を併用。
まとめ ルター式英文法が提案する「時制は2つ」の表とイメージ図
時制 | 調子 | 役割 | 主要な述語動詞 | 文例 |
---|---|---|---|---|
現在時制 | 説明調 | 今を説明 | 現在形、現在進行形、現在完了形 | Emily lives in Boston. She‘s lived there for 10 years. She‘s coming to Kyoto this weekend. I’m looking forward to seeing her. 《現在を説明》エミリーはボストンに住んでいます。 《過去を説明》彼女はそこに10年間住んでいます。 《未来を説明》彼女が今週末京都に来るんだ。 《現在を説明》彼女に会うのを楽しみにしています。 |
過去時制 | 物語調 | 過去を物語る | 過去形(+補助的な述語動詞) | Yesterday I texted Emily and asked her when she would arrive at the airport. 《過去の連続した動作を物語る》 昨日、私はエミリーにテキストメッセージを送り、 空港にいつ到着するか尋ねました。 |

- 現在時制《説明調》 現在のことを話し手が聞き手に説明する
① 【現在形】 「(ふだん)~している」 現在を説明
I usually study online.「ふだんオンラインで勉強している」
② 【現在進行形】 「(これから)~するんだ」未来を説明
“What are you doing this weekend?”「今週末、何するの?」
“I’m going to the movies.”「映画を観るんだ」
③ 【現在完了形】 「(すでに)〜している」 過去を説明
I have already done my homework.「すでに宿題をしている」
※仮定法過去「~だったら」 、仮定法過去完了「~していたら」は、違和感が持ち味。
※助動詞の過去形は(過去ではなく)《丁寧さ》《仮想・実現度の低さ》をあらわす。 - 過去時制《物語調》 過去のことを報告者が物語る
【過去形】「(過去に) ~した」 出来事を物語る
Yesterday I went out, ate a big dinner with Ann.「昨日は出かけて、アンとたっぷり夕食を食べました。」
※助動詞の過去形(would/could/might/should)を使用。
《未実現》をあらわすことが多い。助動詞は多用しない。
英文法のルターさんからのお願い

英文法ルターは声をあげられない文法事項の代弁者です。今回扱った「時制」だけでなく、someや現在時制も日本の英語教育界で誤解される憂き目に遭っています。英文法の誤解を解く手助けを是非ご一緒に!
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