〈授業の小ネタ〉物語を知らないと理解できないことば

〈授業の小ネタ〉
ルターさん
ルターさん

今回の〈授業の小ネタ〉は物語を知らないと理解できないことばとしてバタフライ・エフェクト(バタフライ効果)からスタートして、「風が吹けば桶屋が儲かる」「人間万事塞翁が馬」「釘がないために王国が失われた」を紹介します。
聞き手は中学校教員の中村さんです。

「バタフライ・エフェクト」

中村先生
中村先生

ルターさんが以前のブログで話されていた「ピヨピヨの声がトルネードになる」というのは、バタフライ・エフェクトのことですね!

ブログ記事:問題あり! 中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)は英検準1級より難しい
ルターさん
ルターさん

はい、そうです。

バタフライ・エフェクトの由来

butterfly effect
butterfly effect

●「物語」を知らないと理解できない「ことば」
バタフライ効果   
butterfly effect[バぁタフラァィ エフェクトゥ]
Does the flap of a butterfly’s wings in Brazil set off a tornado in Texas?
「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきが
 テキサスで竜巻を引き起こすか」
気象学者のエドワード・ローレンツの1972年の講演の題名に由来する。
蝶がはばたく程度の非常に小さな撹乱[かくらん]でも遠くの場所の気象に影響を与えるかという問いかけ。

中村先生
中村先生

Does the flap of a butterfly’s wings in Brazil set off a tornado in Texas?

「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こすか」という、
気象学者のエドワード・ローレンツの1972年の講演の題名が元なんですね。

ルターさん
ルターさん

ルターの好きなスピッツの歌(草野マサムネさん作詞)に、バタフライ・エフェクトを暗示する歌詞があります。
ちなみに、ルターはロビンソンがヒットした直後からずっとファンクラブに入っています。

蝶の羽が起こすくらいの 弱い風受けて

スピッツ「聞かせてよ」 https://www.uta-net.com/song/103626/
中村先生
中村先生

「バタフライ・エフェクト」というと、
もうひとつ、『映像の世紀 バタフライエフェクト』ですね。
今日現在(2022/12/5)でNHK総合で週1回放映中です。

ルターさん
ルターさん

『映像の世紀』の旧シリーズもぜひご覧ください。第9集は授業で見せたことがあります。
その話はまたしますね。

内田樹[たつる]さんの考え「ひとりの選択が重大な社会的変化を引き起こす引き金となり得[う]る」

中村先生
中村先生

個人の小さな行いが世の中に大きな影響を与えることってありますよね。

ルターさん
ルターさん

内田樹うちだたつるさんの考えをご紹介します。
ルターは「言っても無駄だ」「書いても無駄だ」とあきらめることなく、これからも前向きに、ぴよぴよとtweetしたり、ブログを書いたりしていく所存です。

●内田樹さんのブログ記事「小学生にはむずかしい文章」

私たちひとりひとりの、ごくささいな選択が、実は重大な社会的変化を引き起こす引き金となり、未来の社会のありかたに決定的な影響を及ぼすかもしれない、その可能性について深く考えることです。もしかするとほかならぬこの自分が起点になって歴史は誰も予測できなかったような劇的な転換を遂げるかもしれない。そういう想像をすることはとてもたいせつです。何より、「私ひとりががんばって善いことをしても、何が変わるわけでもない」とか「私ひとりがこっそり悪いことをしても、何が変わるわけでもない」というふうに自分の歴史への参与を低く見積もって、なげやりになっている人に比べて、今この瞬間においてはるかに人生が充実しているとは思いませんか。

http://blog.tatsuru.com/2009/02/23_1501.html

「風が吹けば桶屋が儲かる」

ルターさん
ルターさん

「バタフライ・エフェクト」は由来となる「物語」を知らないと理解できない言葉でした。
同じような故事成語や歌をご紹介します。

風が吹けば桶屋[おけや]が儲[もう]かる
風が吹けば桶屋[おけや]が儲[もう]かる

風が吹けば桶屋[おけや]が儲[もう]かる
ある事象の発生により、一見すると全く関係がないと思われる 場所・物事に影響が及ぶことの喩[たと]え。
「可能性の低い因果関係を無理につなげた理論」を指すことがある。
■風が吹けば…
→土埃[つちぼこり]が立つ
→土埃が人の目に入って眼病になり、目が見えなくなる
→目が見えない人は昔、音曲[おんぎょく](音楽を用いた芸能)を 
  生業[なりわい]としたので、三味線の需要が増える
→三味線作りには猫の皮を使うため、多数のネコが殺される
→ネコが減ればネズミが増える
→ネズミは桶をかじる
→桶の需要が増え、桶屋が儲かる

中村先生
中村先生

話の流れを追うと、かなり無理がありますね!

「条件文(If…, then…)を用いた説得」に要注意

ルターさん
ルターさん

昔、ルターが書いた文章をお読みください。「風が吹けば桶屋が儲かる」が出てきます。
「条件文(If…, then…)を用いた説得」は、対人交渉でかなり重要なことだとルターは考えています。

「条件文(If…, then…)を用いたアプローチ」というのは契約交渉の場で意識していなければ致命的です。If…, then…というのは、「こうなら」という前提を踏み台にして、「こうですね」と論を積み上げて展開する論法です。「風が吹けば、桶屋がもうかる」の例のように「本当だろうか」と思えるものもあります。

 「こうなら」の部分に自分が望ましい契約内容を入れて置いて、それを踏み台にして論ずると、先ほどまで「仮の前提」でしかなかったはずが、いつのまにか「確固たる前提」にシフトし、ぐらついていたはずの踏み台がしっかりしてくる、というこの不可思議さがあります。

 この論法はアメリカ人が得意とするところです。相手方がこの論法を仕掛けてきたら、必ず「こうなら」の部分の「状況の実現度」を検証し、問題にすることです(つまりその実現度は「万が一」かもしれないわけです)。
藤原正彦『数学者の休憩時間』(新潮文庫)では「風が吹く→ほこりが舞い上がる→ほこりで目を悪くする→盲人が増える→三味線ひきが増える→三味線に必要な猫が減少する→ネズミが増える→風呂桶がかじられる→桶屋がもうかる」の、どのステップも完全なナンセンスではない。しかしながら、舞い上がったホコリで目を悪くする確率は1%未満、盲人が三味線ひきになる率も1%未満…と、各ステップのパーセンテージを掛けると桶屋がもうかる確率は億に一つにもならない、と説明しています。
一方で、自分から仕掛ける場合は、アサーティヴ[断定的]に、手早く踏み台としてキュッキュッと踏み固めてしまうことです。

ルターさん
ルターさん

この文章はビジネス書の翻訳をしたときに本の前書きで書いたものですが、
「条件文(If…, then…)を用いた説得」は本当に要注意です。

2002-11-14 会報担当の言語世界(その13)https://plaza.rakuten.co.jp/shineikenkngw/diary/200211140000/

「人間万事塞翁が馬」

人間万事塞翁が馬 [にんげんばんじ さいおうがうま]
人間万事塞翁が馬

●「物語」を知らないと理解できないことわざ
人間万事塞翁が馬 [にんげんばんじ さいおうがうま]
■中国の北端、国境の塞[とりで]の近くに、占いが得意な翁(老人)が住んでいた。
→飼っていた馬が逃げてしまった。
  みんなが同情したが、彼は「これは幸運が訪れる印だ」と言う。
→逃げた馬が立派な馬を連れて帰ってきた。
  みんなが祝福すると、彼は「これは不運の兆しだ」と言う。
→彼の息子がその馬から落ち、足の骨を折った。
  みんなが同情すると、彼は「これは幸運の前触れだ」と言う。
→息子はその怪我のおかげで、戦争に行かずにすんだ。

『淮南子』 [えなんじ] 人間[じんかん]訓  参考:https://kotobank.jp/

中村先生
中村先生

塞翁が馬、ってこういう故事成語だったんですね。

「釘がないために王国が失われた」For want of a nail the kingdom was lost.

ルターさん
ルターさん

「風が吹けば…」に似ているマザーグースの歌を紹介します。

For want of a nail the kingdom was lost.
釘がないために王国が失われた。
For want of a nail the kingdom was lost

●物語を知らないと理解できないことば
For want of a nail the kingdom was lost.
釘がないために王国が失われた。
For want of a nail 釘がないために
For want of a nail the shoe was lost. 釘がないために蹄鉄が失われた
For want of a shoe the horse was lost. 蹄鉄がないために馬が失われた
For want of a horse the rider was lost. 馬がないために騎士が失われた
For want of a rider the battle was lost. 騎士がないために戦いが失われた
For want of a battle the kingdom was lost. 戦いがないために王国が失われた
And all for the want of a horseshoe nail. すべては馬の蹄鉄の釘がないため

出典:Mother Goose Nursery Rhymes マザーグース 童謡

ルターさん
ルターさん

マザーグースの歌の解説です。

For want of a nail the kingdom was lost.の解説
出典:https://www.dictionary.com/browse/for-want-of-a-nail-the-kingdom-was-lost

For want of a nail the kingdom was lost.の解説
Something of great importance may depend on an apparently trivial detail.
The saying comes from a longer proverb about a battle
during which the loss of a nail in a horseshoe leads to the loss of a horse,
which leads to the loss of the rider,
which leads to the loss of the battle,
which in turn leads to the loss of a whole kingdom.
大事なことが、一見すると些細なことに左右されることがある。
このことわざは、
戦いの最中に蹄鉄の釘が失われると、馬が失われ、
騎手が失われ、
戦いが失われ、
ひいては王国全体が失われるという、
戦いについてのより長いことわざに由来しています。
DeepL翻訳 https://www.deepl.com/translator
出典:https://www.dictionary.com/browse/for-want-of-a-nail-the-kingdom-was-lost

For want of a nail the kingdom was lost.の解説の英文解説

ルターさん
ルターさん

関係代名詞which「それを」が効果的に使われている英文です。
2行目のa battle(戦い)の a に注目しましょう。
英語話者は【不定冠詞】a/anと聞くと「どんな?」が気になる。
その直後から制限用法で「こんな?」を説明します。

2行目のa battle(戦い) during which(それの間に)のように説明が続きます。
【関係代名詞】whichは「それは」「それ」「それを」と部分和訳をします。
4行目のwhich(それは)leads to (~に至る)the loss of rider(騎士を失うこと)
のように順を追って読んでいきます。

The saying comes from a longer proverb about a battle
そのことわざは長めのことわざから来ている 戦いについての
during which the loss of a nail in a horseshoe leads to the loss of a horse,
それの間に  蹄鉄の釘が失うことが     ~に至る   馬を失うこと
which leads to the loss of the rider,
それは~に至る 騎士を失うこと
which leads to the loss of the battle,
それは~に至る 戦いを失うこと
which in turn leads to the loss of a whole kingdom.
それは その結果 ~に至る 王国全体を失うこと

中村先生
中村先生

順番に読んでいけばいいんですね。

Twitterの民によるバタフライ効果 ハッシュタグ(#)を読む

ルターさん
ルターさん

最後にブログ記事をお読みください。
Twitterの民のひとつのtweetがバタフライ効果を生むことがあります。
ですので、ルターもピヨピヨとtweetし続けます。
短いtweetの中に垣間見える、センスの良い諧謔(かいぎゃく:こっけいみのある気のきいた言葉)は人の心を軽くします。
また、tweetは流れていってしまうものですので、まとめてブログ記事として書き記すことの大切さも感じています。

2020/11/28 日本語のセンス ~ 安倍政権と菅(すが)政権と対峙するTwitterの民

 Twitterをしていると「ハッシュタグ」がついている。シャープ(#)のあとにキーワードをつけて検索できるようにするものだ。
昨日(2020/11/27)は「#スガもプリズン」というハッシュタグを見つけた。その日本語のセンスの良さに深く感じ入った。Twitterの民はまさにtweet(鳥のさえずり)のようにピヨピヨというかすかなささやきによって世論に影響を与え、「ソフトな独裁」(と私が考える)安倍政権の支持率をじわじわと下げ、権力の座から安倍さんを降ろすことに貢献したと思う。バタフライ効果、恐るべし。

安倍政権8年と菅(すが)政権の間3ヶ月で(私に思い浮かんだ)日本語のセンスの良いハッシュタグについて記録しておこうと思う。書いておかないと忘れちゃうでしょ? 
ジョージ・オーウェル『1984』のウィンストンは「書くこと」「自分のことばで記録すること」で反抗し始めた。ルターは今、ぼうごなつこさんの『100日で崩壊する政権』を読み、この2020年の100日間に起きたことを振り返っている。いかに忘れているか、ひとつひとつを逃さず書き留めることの大切さがよくわかる。幼子2人を抱えながら書き続けている、ぼうごなつこさんに感謝。

1)アベノマスク 2020/4/1(布マスク2枚って…、エイプリールフールかと思ったよ!)

┌ エコノミクス
├ アベノミクス
└ アベノマスク

エコノミクスは経済。
アベノミクスはエコノミクスをもじった安倍政権による経済政策。実際は緊縮財政で国民は苦しめられている。
アベノマスクは新型コロナ対策で税金466億円→260億円を投じて「一人2枚、小さなガーゼマスク(一部には虫や異物混入あり)」を配布したことを揶揄したことば。

2)スガもプリズン 2020/11/27

┌ 巣鴨プリズン
└ スガもプリズン

巣鴨プリズン(現在はサンシャイン池袋)は第二次世界大戦後、日本の戦犯が収監された刑務所。ちなみにルターの母さんは立教女学院高校(英国国教会系の日本聖公会の学校)の在学時に学校の指導(キリスト教では慈善活動は自然な行為)で、B・C級戦犯の男性「ミスターふらり(ふらふらと飄々としているの意味)」さんに手紙を書き、手紙を交換したと昔聞いたことがある。女学生と戦犯の交流。物語の世界ですね…。

「スガもプリズン」は安倍首相も刑務所、菅首相も刑務所へどうぞの意味。
2020/11/26安倍さんの「桜を見る会前夜祭」で800万円補填していた(買収容疑)を読売新聞が報道した。それを受けて、11/27今度は菅首相がパーティーの不記載がスクープされた。

3)僕難突破解散 #お前が国難  2017/9/25

┌ 国難こくなん突破解散
└ 僕難ぼくなん突破解散

国難突破解散は安倍首相が「国難突破解散」と銘打って衆院解散した件。

僕難突破解散は森友学園、加計学園問題からの逃げ切りを計って解散したことを揶揄したことば。

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