英語教育における辞書指導:例文をたくさん読み、英文の「連結」に意識を向ける姿勢を育む

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電子辞書に思うこと:便利さの裏側

2003年当時、生徒の間では電子辞書を使う人が増えていました。学校に業者が来て安く売っていたというのも一因でしょう。でも、ちょっと待ってください。辞書って何でしょう? 知らない単語の意味を引いて、「知らない単語。引いた。あった。終了」で終わりですか? これだけなら、つまらないですよね、電子辞書! 普通の紙の辞書なら、近くにあった語句や例文が自然に目に入り、つい道草したくなります。そういう楽しみは電子辞書にはないんです。

教育の理想:多角的な視野を提供しつつ、楽しめる学習を

一方的に単語の意味だけを調べる人に多角的な視野を提供し、「こなす学習」ではなく「楽しめる学習」の機会を保障すること。それが教育のあるべき姿だと私は思います。「知らない単語。引いた。あった。終了」という感性の人間を大量生産しかねない英語教育には、本当に気をつけないと恐ろしいことになります特に英語学習では、辞書を「読み込める」かどうかが勝負の分かれ目です。

恩師の教え:薄い辞書じゃダメだ 『連結』を例文で覚えることが重要

高校3年の時、4月に薄い辞書を授業で使っていたら、英語の恩師・古田部昌幸先生に「そんな辞書ではダメだ」と叱られました。最初は「どうしてダメなんだ」と反発しましたが、授業が進むにつれて先生の意図がじわじわ分かってきました。古田部先生はよく単語の連結を質問していて、薄い辞書には例文がほとんどなく、that節を取るのか、to do / doingを取るのか、前置詞はどうなのかが分からないのです。卒業後、教育実習で母校に戻った時も、古田部先生の授業を見学しましたが、生徒たちは懸命に辞書を引いていました。電子辞書じゃダメなんです。教育にならないんです。そこは譲れない一線を、英語教員として守ってほしいと2025年の今でも思います。

例文の魅力:「blow」で見る英語の楽しさ

たとえば、オンラインのロングマン辞典を引いていたら、「blow」の用法としてこんな例文が目に入りました(和訳はDeepL、出典:https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/blow):

① She blew onto her coffee to cool it down.
「彼女はコーヒーを冷ますために息を吹きかけた。」
② He blew the smoke right in my face.
「彼は私の顔に煙を吹きかけた。」

①は「彼女がフーフーと口をすぼめてコーヒーを冷ましている」様子が目に浮かぶ、素晴らしい例文です。こういう例文に出会うと、英語学習が楽しくなりますよね。
ここで注目したいのは①の「onto」です。
コーヒー自体を吹き飛ばしたのではなく、

「息をコーヒーに吹きかけた」ので【自動詞+onto】。
一方、②では煙自体を吹き飛ばしているので【他動詞】です。

辞書に例文があるからこそ、こうした動詞の使い分けが実感できるんです。

ルター式英文法:創造性を育む提案

そして、ここで「ルター式英文法」の出番です。私はさらにこんな例文を提案します:

③ She blew her coffee cool.
「彼女は息を吹きかけてコーヒーを冷ました。」

これはSVOC構文(主語+動詞+目的語+補語)で、「吹いて~の状態にする」という発想です。ただし、正直に言うと、この表現はネイティブには少し珍しく、①のような「blow onto」が一般的だと、xAIが開発したGrokに指摘されました
それでも、ルター式では①の「onto」を意識しつつ、③のような創造的な表現を思いつく力を育てたいと考えています。たとえば、日常の動作を英語で描写する練習を通じて、動詞や前置詞の使い分けを自然に身につける。そんな教材作りと英語教育を目指しています。

■英語上達の重要な鍵となる「連結」
連結とは、that節を取るのか、to do / doingを取るのか、前置詞はどうなのかを指します。これを踏まえ、以下に具体例を示します:
● look(見る)は、atと連結。
  look at ~「~を見る」、
  look at O +動詞の原形「Oが~するを見る」
  look at O ~ing「Oが~しているを見る」のように使う。
 例: Look at this.「これを見て!」
   Look at him run!「彼が走るのを見て!」
   Look at her dancing!「彼女が踊っているのを見て!」
「意図的に見る」look atはSVOCの文型を取り、
「見える」seeと同様、【知覚動詞】として扱われます。
● wait(待つ)は、forと連結。
  wait for ~「~を待つ」、
  wait for O to do「Oが~するのを待つ」のように使う。
 例: I'll wait for you.「あなたを待ちます。」
   Let's wait for him to come!「彼が来るのを待とう!」
● a picture(写真)は、of と連結。
  a picture of me「私の写真」、
  a picture of me smiling「私が微笑んでいる写真」のように使う。
この場合、that節には連結しない:a picture that I was smiling は非文。

今も変わらない信念:辞書と学びの価値

20年前は電子辞書が主流で、今やスマートフォンですぐに手元で自動翻訳ができるようになっても、紙の辞書や例文豊富なオンライン辞典を使う価値は変わりません。単語の意味を「こなす」だけじゃなく、例文から学び、英語表現の豊かさを楽しむ。これがルターの考える英語教育の理想です。みなさんも日常の動作表現の例文をオンラインの英英辞書で探してみませんか?

ルターさん
ルターさん

以上の記事は「2003.02.21 会報担当が考える英語教育(その8):例文について その2 電子辞書vs. ふつうの辞書」に加筆して、Grokに相談しながら再構成しました。Grokに感謝しています。

コメント

  1. 青木智行 より:

    お久しぶりです。メールを拝読した後、ブログを開いてみましたら、同じ内容でもブログは読みやすいですね。もちろん内容はいつも通り、納得、共感、示唆に富む先生らしいものでした。例文の解説が本当に勉強になります。ありがとうございました。夜遅かったので、メールの返信ではなく、こちらにコメントを残します。

    • 青木さん、こんにちは! 嬉しいコメントでした。ありがとうございます。Twitter(X)のGrok3に相談しながら記事を書いたので、いつもと少し違うテイストですが、読みやすくなったと思います。また、英文の「連結」については英語学習で大事な概念だと思うので、さらに記事を書きます。

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